十条銀座博物館 第1期展 昭和14年度の事業報告書からJUJO GINZA READINGS

公開日:2008-03-20十条銀座博物館 第1期展 昭和14年度の事業報告書から

十条銀座の商店街事務所には、戦前からの長い歴史を物語る商店街の古い記録が多数保存されています。役所に提出した文書はもちろん、ポスターやチラシ、記念品、粗品のサンプルなどなど、今となっては大変貴重で懐かしいお宝が、倉庫の片隅にひっそりと眠っています。このコーナーでは、そうした資料を少しずつご紹介しながら、商店街が歩んで来た道をちょっと振り返ってみたいと思います。

第1回目は、十条銀座が組合を結成し、法人となった昭和14年度の事業報告書をご紹介いたします。昭和13年8月24日、十条銀座は商業組合として正式に登記し、「東京十條銀座商店街商業組合」となりました。現在の北区域(当時は王子区)では、昭和12年に王子豊島通り商店街(豊川学校通り商店街)と東十条商店街が商業組合を結成しており、十条銀座はこれに続く商業組合結成となりました。

当時、東京府下では、麻布十番商店街や武蔵小山商店街など、今も有名な商店街が続々と商業組合を結成しました。こうした動きは東京府の指導によるものと考えられます。
東京府では、昭和10年に中小商工業者への助成金制度を設けて商業組合の活動を支援しており、各商店街では組合を結成して、こうした制度を積極的に利用したのだと思います。十条銀座を含め3つの商店街が相次いで組合を結成した王子地区は、戦前から商店街活動の活発な土地柄だったと言えるでしょう。
(参考・東京都公文書館のホームページ「昭和11年、12年の商店街大売出し」)

 

◆ 東京十條銀座商店街商業組合 昭和14年度事業報告書 ◆

◆ 東京十條銀座商店街商業組合 昭和14年度事業報告書 ◆



◆ この事業報告書は、昭和15年春の決算時に発行されたもので、おそらく十条銀座として、初めて発行された事業報告書と思われます。昭和13年8月に十条銀座が法人化される以前、この商店街には3つの任意団体が組織されていました。ひとつは「銀座会」、もうひとつは「銀座一丁目会」、そして「昭和会」の3団体です。この3団体は「十條銀座聯合會」を作り、共同で街灯を設置したり、売出しセールを実施したりしていたそうです。
しかし、東京府の指導や競合する商業施設の脅威もあり、3団体が合併して商業組合を結成したのでした。

 

◆ 記録によれば、中野直作氏(海津屋呉服店)外15名の発起人が昭和13年5月、役所へ「東京十條銀座商店街商業組合設立発起ニ関スル届」を提出。同年6月17日午後1時から、設立総会を開催したとあります。会場は現在もある「十條会館」(当時は大塚町会館と称した)で、83名の商店主が出席し、商業組合の設立を決議しました。
この時の総会議事録や、定款の草案、役員名簿などを添えて設立認可申請書を提出したのが7月7日。そして8月24日に正式な認可を受けて登記を済ませました。
(東京府知事認可 寅商第六二六二号)

◆ 商業組合結成当時の役員は下記の通り

          理事長 :丸山 三郎       
   常務理事:井上  清
   理 事 :大塚 内蔵
   理 事 :柳澤 忠雄
   理 事 :河西 重雄
   理 事 :藤堂 益男
   理 事 :荒川 鶴司

   監 事 :醍醐金次郎
   監 事 :高橋 緑郎
   監 事 :服部 廣治
   監 事 :金子 鍵蔵

            以上

   組合員数は184名とあります

 

◆ 当時の出資金は10,780円。年間の共同宣伝費用が2,791円。そのうち特売費が1,580円余と多く、中元売出しに694円余、歳末売出しに516円余を計上しています。
この他、共同街路灯の維持費に813円商店街事務所の家賃に450円、(事務員の?)給料に1104円など総額15,218円余の経費を計上しています。

◆ 昭和14年度事業報告 ◆

◆ 昭和14年度事業報告 ◆

◆ 報告書によれば、実施した事業内容は多岐にわたり、共同仕入事業(包装紙など)、共同宣伝事業、金融事業、共同施設事業(共同陳列所、街路灯など)、共通商品券事業、納税組合事業、保険代理店事業、店舗統制事業(当時から出巾陳列の取締りをやっていたのですね)、商業青年団事業、研修事業などなど、活発な活動をしていたようです。

商業青年団というのは、他の商店街にもあったようで、豊島園で開催された府下商業青年団の運動会に十条銀座の商業青年団も参加したと記されています。

◆ 興味深いのは「丸高問題」と題する次の文章です。
「昭和十四年十月「十條銀座」ニ出現セル丸高均一ストア問題ニ関シテハ役員以下、組合員ノ一糸乱レヌ団結ニ終始セル結果、販売品ノ価格ニヨル制限、売場拡張不能等、諸条件ヲ誓約シ「十條銀座」ノ意志ヲ完全ニ達シ解決セリ」丸高ストアは、現在の十条駅前ロータリーの場所にあった十銭均一ストアで、今でいえば
大型百円ショップでしょうか。「丸高デパート」とも言って、大型店の進出に当時の十条銀座役員一同団結して対抗措置に乗り出し、商業組合の結成を促す一因にもなったようです。

 


今回は第1回目ということで、当商店街組織の発足当時の記録をご紹介いたしました。
次回も、同じ事業報告書について取り上げたいと思います。
どうぞお楽しみに。

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