公開日:2005-06-16十条村役場9.お冨士さんと麦わら蛇
本日も十条村へお越しいただき誠にありがとうございます。
もうすぐ恒例の「お冨士さん」(十条冨士神社・山開き)の縁日がやってまいります。
今回は、せっかくですからお冨士さんに因んだお話をいたしましょう。と申しましても、
当十条村役場ならではの、あまり知られていない側面にスポットを当てて、
ご紹介してまいりたいと存じます。
◆ 右下の写真は、お冨士さんの縁日当日、境内で売られている縁起ものの「麦わら蛇」でございます。単に蛇(じゃ)とも呼ばれ、もともと駒込の冨士神社境内で江戸時代から売られていたものです。冨士神社は竜神信仰と関係が深く、そのためか十条の冨士神社でも昔は「雨乞い」の儀式が行われていました。夏に日照りが続くと、村人たちが冨士神社に集まり、麦わらで数メートルの大蛇を作ります。若い衆がそれを担いで、村中を練り歩き、最後はお冨士さんのご神木に大蛇を巻きつけて雨が降るように祈願したのでございます。この雨乞いは、まだ農家が多く残っていた大正時代ころまで行われていたそうです。
◆ 「ズシ」と呼ばれる十条の集落では、集落の出入り口付近に小さな神社を祭ったというお話を以前にいたしました。お冨士さんも、もともとは集落の魔除けとして祭られた小社が発展したものと考えられております。このように集落のはずれに魔除けを祭る習俗は日本各地で見られるのですが、しばしばその場所には麦わらの大蛇が供えられました。魔物が入って来ないように、大蛇を吊るして驚かそうという意味だったのでしょう。十条冨士神社の雨乞いに用いられた麦わらの大蛇というのも、ひょっとすると本来は集落の魔除けとしてご神木に巻きつけられていたものだったのかもしれませんね。
↑ 川口市安行原の麦わら蛇 … 今でも毎年、麦わらで大蛇を編み、木に巻きつけています。
今日はお冨士さんのお話、というより、麦わらの蛇(じゃ)についてお話をいたしました。
昔むかし麦わらの蛇は、雨乞いの儀礼や、集落の魔除けとして祭られていたのでした。
でも、かつて十条のお冨士さんで担ぎ回された大蛇は、雨乞いに使われた蛇でしたから、
集落の魔除けと関係があったのかどうか、いまのところよくわかりません。
今も十条のお冨士さんで売られている麦わら蛇は、蛇口などに吊るし、
厄除け、水当たり、火防などのお守りとして祭られています。
数に限りがありますので、お求めの方はどうぞお早めに…。